>   >   > 国民的ドラマ【『あまちゃん』】が踏み込んだ芸能界タブー

――連日20%を越える、国民的ブームとなったNHK朝の連ドラ『あまちゃん』。だが、一方では、芸能界を舞台としたストーリーの中に、数々のタブー破りがぶちかまされているとして、業界では冷や汗混じりで鑑賞されているという――。

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(絵/金子ナンペイ)

『あまちゃん』

13年/NHK/脚本:宮藤官九郎
出演:能年玲奈、小泉今日子、宮本信子、杉本哲太、松田龍平ほか
東京から、母の実家のある北三陸にやってきた高校生、天野アキ。海女の祖母、天野夏の海にもぐる姿に憧れ、自らも海女クラブの一員となる。しかし、アイドルに憧れる高校生、足立ユイとともに、ご当地アイドルとして取り上げられたことから地元で大人気に。そこを東京から来たスカウトマンに選ばれ、アイドルグループの一員として上京。挫折を経験しながらも、独立し、アイドルとして人気が出始めた矢先、東日本大震災が起こり……。80年代と現在の日本のアイドルシーンを巧みに取り入れた展開が受け、国民的人気作となった。

 本誌9月号でも触れた通り、NHK朝の連ドラ『あまちゃん』には、芸能界のドンこと周防郁雄社長が率いる大手芸能プロ・バーニングプロダクションの思惑が大きく反映されている。主演の能年玲奈はバーニング傘下のレプロエンタテインメント所属、主要キャラを演じる小泉今日子や小池徹平もバーニング所属と、配役に同社の意向が大きく影響しているのは、芸能通なら周知の事実だろう。だが、宮藤官九郎の脚本や出演陣の熱演により、視聴率は好調、さらに主演の能年に関しては異例ともいえる待遇だという。

「マスコミとの太いパイプを持つことで有名な周防社長は、毎年夏には子飼いにしている芸能記者にスイカを贈るのが慣習。過去には『トイレの神様』でブレイクした植村花菜など、毎年その箱には社長イチオシのタレントのステッカーが貼られているのですが、今年は能年ステッカーでしたよ(笑)」(スポーツ紙芸能デスク)

 2010年、NHK紅白歌合戦に初出場した植村は特別バージョンで同曲を歌ったことでも話題となったが、そこにドンのゴリ押しがあったというのはつとに有名な話だ。このように、音楽業界にも顔が利く周防社長が、『あまちゃん』利権で白羽の矢を立てたレーベルはビクターエンタテインメントだという。

「SMAP、サザンオールスターズという二枚看板を抱えるビクターは、彼ら以外の歌手はまったく振るわない(苦笑)。そこに今回、『あまちゃん』の作中で使われている楽曲をリリースすべく、制作サイドが周防社長にお伺いを立てたところ、小泉や同じくバーニング所属の長山洋子らが籍を置くビクターを指名。そのおかげで、オリジナルサウンドトラック『あまちゃん 歌のアルバム』をリリース、3日間で3万枚と好調で、サントラとしては異例のヒットとなっている」(芸能プロ幹部)

 そのビクターにいいとこ取りをされてしまったのが、ベイビーレイズなるアイドルユニットだ。『あまちゃん』に登場する「アメ横女学園芸能コース」の曲『暦の上ではディセンバー』の元歌を歌う彼女らは、能年同様レプロに所属。

「彼女らは所属レコード会社がポニーキャニオンのため、大人の事情ゆえ(苦笑)、『暦の~』の発売日は、『歌のアルバム』より後の9月11日になったよう。業界内では、ファンと二人三脚で地道に活動してきたベイビーレイズを応援する向きも少なくない」(同)

 このように『あまちゃん』人気の裏には芸能界最大のタブーともされるドンの思惑が見て取れるが、それは作中の演出にも散見される。いささか前フリが長くなったが、ここではストーリーをおさらいしながら、その演出を見ていこう。

AKBとNHKの間で交わされた密約とは

 08年夏、地味で暗い少女だった東京育ちの天野アキ(能年玲奈)が、母の春子(小泉今日子)に連れられ、初めて母の故郷の岩手県北三陸にやってきたところから『あまちゃん』は始まる。このドラマにおいて、常にずけずけと物を言う、どこかやさぐれた母・春子の存在は、作品の中で際立っている。

「この役、アイドル時代から有名だったヘビースモーカーでヤンキー気質という小泉の素に近いもの。そもそもNHKの朝ドラは、まず最初に主役ではなくサブのメインキャラからキャスティングが決まるのが通例で、最初に小泉のキャスティングが決まった。春子=小泉は、脚本の宮藤官九郎も真っ先に念頭に置いて書いた配役だったかもしれない。ただ、同枠のギャラは非常に安く、主役級でも1話当たり数千円という破格な価格。しかも数年前までは放映中、CMに出ることも禁じられていた。さすがに今はそのシバリもなくなったけど」(前出・芸能デスク)

 朝の連ドラという看板ゆえ、出演を希望する者は後を絶たないが、「以降に予定されている同枠のサブキャラには、篠原涼子の名前が挙がっていた。だが、ギャラが安かったためか、ほかの仕事とバッティングしたためか、オファーを蹴ったそう」(同)という話もある。いずれにせよ、もうひとりの80年代アイドル・薬師丸ひろ子を春子と因縁のある大女優・鈴鹿ひろ美にキャスティングしたことが、このドラマの絶妙な仕掛けだろう。

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