>   >   > 角川書店・井上伸一郎×ブシロード・木谷高明 オタク"頂上"対談

――日本経済の低迷が叫ばれていた近年、その中でマンガやアニメといった、いわゆる“オタク産業”は、日本を代表するコンテンツへと着実に成長を遂げた。そこへ綺羅星のごとく現れたのが、株式会社ブシロード。同社社長の木谷高明氏は、圧倒的な広告量によって今、カードゲーム市場を拡大せんとしている。そんな氏が、オタク業界で盤石の地位を固める角川書店社長・井上伸一郎氏と邂逅。2人のオタク社長が交差するとき、日本経済を救うオタトークが始まる──。

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(写真/田中まこと)

 カードゲームに興じる2人の紳士。カードの采配に一喜一憂する彼らこそ、日本が誇るオタクカルチャーとビジネスを牽引するキーパーソンなのだ。クールに手札を切る御仁(写真右)は、角川書店社長・井上伸一郎氏。今年3月には、角川書店をはじめ、メディアファクトリー、エンターブレインといったアニメ、ゲーム、ライトノベルを多角的にメディア展開するグループ傘下9社を「株式会社KADOKAWA」へと統合することで話題を集めた。そんな氏と対峙するのは、世界一のTCG(トレーディングカードゲーム)企業を目指す株式会社ブシロード社長・木谷高明氏(写真左)。タレント・DAIGOが、プロレスラー・棚橋弘至と荒野でカード対戦をしているCMを見たことがある人は多いだろう。このCMのTCG『カードファイト!! ヴァンガード』や、アニメやゲームなどを起用したTCG『ヴァイスシュヴァルツ』(写真)などを製作しているのがブシロードだ。現在、TCGの国内市場規模は1000億円といわれている。業界シェア1、2位のコナミ、タカラトミーを猛追するブシロードは、創業からわずか5年目の12年度、グループ連結売上高で、初年度のおよそ50倍に当たる150億円超を記録。同年にはプロレス団体・新日本プロレスリングを買収するなど、最強のエンターテインメント企業へと急成長中のオタク企業なのだ。そんな日本のオタク産業を背負って立つ2人のオタク・マイスターに、オタクビジネスの「現実」と「未来」を熱く語り合ってもらった。

──今回は、日本のオタクビジネスを牽引するお二方にお話をうかがいます。お2人は、もともとお知り合いなんですよね?

木谷高明(以下、木谷) 最初に会ったのは、井上さんがアニメ誌『ニュータイプ』(角川書店)の編集長をやっていた97年くらいですね。僕が当時代表を務めていたブロッコリー【編注:木谷氏が創設したアニメやキャラクタービジネスを展開する企業】で作ったアニメの掲載をお願いしに行ったのが最初。2回目は、作家のあかほりさとる先生と飲んでいて、『前にお会いした時に失礼なことしませんでしたか』っていきなり言われたのを強烈に覚えてます。

井上伸一郎(以下、井上) それは全然覚えてない(苦笑)。

木谷 2回目は酔っ払ってたから(笑)。井上さんは今でこそ社長という紳士を装ってますが、当時はやんちゃなオタクという感じでしたよ。

井上 今も中身は変わってないです。夜の街に出ても女子がいるお店に行くのがあまり好きじゃなくて、当時はいろいろな人と会って明け方近くまで飲んでいましたね。

木谷 作家と仲良くなるために飲むという、昔ながらの編集者のイメージです。そんな出会いだったから、印象に残ってます。

井上 私も、(木谷氏は)よく飲みに行って、夜になると元気になる方と感じてました(笑)。

──お2人は、“オタ友”というわけではないんですか?

井上 私は普通のアニメやマンガのファンよりも、作品を見ている数はずっと少ないと思います。昔見た作品の細部を普通の人より覚えているので、たくさん知っているように見えるのかもしれません。20代からアニメ雑誌を作り始めたので、仕事と実生活が一緒になったという感じですね。

木谷 僕もゲームやマンガは好きでしたが、オタクとは言えないと思います。アニメも全然見てない。ただ、プロレスはずっと見ていて、専門誌は必ず買ってました。

井上 私もプロレスファンだから、そっちの趣味のほうが近いかも。

木谷 僕らの子ども時代の60~70年代は、親の世代に“アニメ”という言葉がなく、“テレビマンガ”と呼ばれていた時代だった。だから、小学校高学年でアニメを見ていると『いつまでそんなのを見てるんだ』と言われてました。

井上 アニメや特撮をよく見ていて、中1くらいまで自分で『怪獣ノート』を編集してたんです。『ウルトラマン』などに出てくる怪獣の特徴をまとめて、雑誌の写真を切り貼りして作った自作の怪獣事典です。当時から編集者気質だったんでしょう。でも、母親に見つかって捨てられましたね(笑)。

木谷 僕が今の子どもだったら、プロレスファンでなく、アニメファンになっていたと思います。プロレスは夕方にやっていて、親に見せてもらえた。それがプロレスが深夜に追いやられて、アニメはゴールデンでも深夜でも放送されるようになっている。内容にもよりますが、今は親の世代もアニメを見て育っているから、ドラマと同じ感覚でアニメを見られる。昔とは時代背景が違うでしょう。

カードはインフラビジネス?オタク産業のビジネスモデル

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『カードファイト!! ヴァンガード』のマンガは「ケロケロエース」(角川書店)で連載されている。

──そんな状況を反映してか、ブシロードはCMスポットを至るところに投下していますね。放送中のアニメを見ると、ほぼ必ずブシロードのCMが入っていますし、ゴールデンのバラエティ番組でも見かけます。木谷さんの自著『煽動者』(ホビージャパン)の中で、「目に入りすぎてウザい」という批判もあるほどの大規模な広告投下の目的は、認知度拡大とTCG市場自体の拡大のためだ、と。

木谷 これだけ広告にお金をかけるという采配は、僕が現場をわかっていて、なおかつオーナーだからできることなんです。『機動戦士ガンダム』で例えると、社長自らが手動で機体を動かして、有視界で飛んでいるようなもの(笑)。それは時として無計画になるリスクがあるので、これ以上会社が大きくなれば無理だと思います。ブシロードもちゃんとリスク管理をしつつ、今年中には自動運転に切り替えないといけません。

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