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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第62回

パイロットはアル中!?“奇跡の英雄”の真実

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雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。

『フライト』

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ベテランパイロットのウィップ(デンゼル・ワシントン)は、あわや墜落というトラブルから奇跡の着陸を果たし、アメリカ中の英雄となる。しかし、実は彼は酒気帯びで飛行機を操縦していたのだった。

監督/ロバート・ゼメキス 脚本/ジョン・ゲイティンズ 出演/デンゼル・ワシントン ジョン・グッドマンほか 日本では2013年3月全国ロードショー予定。


 2009年1月15日、筆者がニューヨークでの取材を終えて、自宅のあるカリフォルニアに帰るため、バスでラガーディア空港に着くと、空港は騒然とし、テレビの前に人々が集まっていた。

 先ほど、この空港から飛び立ったばかりの飛行機が落ちたというのだ。テレビを観ると、ハドソン川に浮かぶ飛行機から乗客が救出されている。咄嗟の判断と的確な操縦で155人の乗客の命を救ったベテラン機長サレンバーガーは全米の英雄になった。

 映画『フライト』の主人公ウィップ・ウィテカーも、大ベテランのパイロット。扮するは『マルコムX』『アンストッパブル』などで熱い正義漢を演じてきたデンゼル・ワシントン。

 ウィップが機長を務める飛行機は、高空で突然急降下を始めた。操縦桿をいくら引き上げても真っ逆さまに落ち続ける。市街地めがけて! その時、ウィップはなぜか飛行機を上下反転させた。阿鼻叫喚の機内。

 これは00年1月にアラスカ航空の飛行機に実際に起こった事故をモデルにしている。整備不良で急降下した機体を、機長は懸命に立て直したものの、再びコントロールを失い、上下反転し、地上に激突。全員死亡した。

 しかし、『フライト』の機長・ウィップは減速に成功し、無人の野原に不時着。乗務員など6人の犠牲者は出たが、乗客は無事。大惨事は免れ、ウィップは国家的英雄になった。

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