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――アメリカでも何かしらナショナリスティックな内容のマンガは描かれてきたのか? スーパーヒーローのコミックを中心に、同国におけるマンガと愛国のかかわりを追いたい。

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【1】『Sub-Mariner Comics Vol 1』#10(Timely Comics/1943年)
【2】『Captain America Comics』#1(Timely Comics/1941年)
【3】『Tales Of Suspense』#39“Iron Man!”(Marvel Comics/1963年)
【4】Mark Millar & Steve McNiven『Civil War』#1(Marvel Comics/2006年)

 米軍が日本へ爆撃を始めていた1944年末、「ニューヨーク・タイムズ」はメガネをかけた出っ歯の猿が包帯をして泣きわめく戯画を掲載した。アメリカにおけるマンガと愛国の関係を考えるとき、そんな戦中の新聞に載せられたプロパガンダ・マンガがまず挙げられるが、日本での海外コミックス研究の第一人者、小野耕世氏は「それは1コマの政治風刺マンガで、子ども向けのコミックスとはタイプが異なります」とつけ加える。

 とはいえ戦中のコミックブックも、映画やラジオなどほかの娯楽と同様、戦意高揚に一役買った。たとえば、マンガ出版社タイムリー・コミック(後のマーベル・コミック)のサブマリナーというスーパーヒーローは、アメリカが第二次大戦に参戦するのに先がけて40年2月にナチスの潜水艦と戦い、同社のもうひとりのヒーロー、キャプテン・アメリカは41年3月創刊号の表紙でヒトラーを殴打。そして真珠湾攻撃後のヒーローたちは、それまでのように世の犯罪ではなく、スパイや枢軸国側(ドイツ、日本、イタリアなど)に協力する科学者など自国の脅威と戦うようになる。

「悪者のヒトラーが寝ているところを少年ヒーロー隊が襲撃するといったマンガもありましたね。ただ、それは国策ではなく、時代の気分から作家や出版社が自主的にテーマにしたこと。また、スーパーヒーローが日本軍をやっつける話もあった。マンガではないですが、アニメの『スーパーマン』では、アメリカが製造した超巨大爆撃機を日本のスパイが壊そうとするエピソードがあります。それを阻止するスーパーマンは、スパイを殺したり日本軍と戦ったりはしません。超能力を持ったヒーローたちは強すぎて、本当に戦ったら戦争が終わってしまいますからね。とにかく当時のこうした作品は、ストーリーとしては単純でたわいのないものでした」(小野氏)

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