>   > 【佐山一郎】が日本サッカー協会に対する「違和感」を批評
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『サッカーでメシが食えるか? 2』(ノースランド出版)

 サッカー界をリードしていくべき日本サッカー協会(JFA)に、サッカーファンおよび140万人近い登録者はどのぐらい期待をかけているのだろうか? どれほどのリスペクトを抱いているのだろうか? その答えを、歴史的に考察することで導き出したい──。

 各国・地域サッカー協会の創立年をみると、1863年のFA(イングランド協会)を皮切りに、1880年までに英国4協会がまず出揃い、次いで19世紀末までにデンマーク、オランダ、アルゼンチン、チリ、スイス、ベルギーなどの国々が続いた歴史がある。

 わが日本はといえば、1921年に大日本蹴球協会が誕生し、FIFA(国際サッカー連盟)への加盟は29年。大陸連盟としてのAFC(アジアサッカー連盟)入りは第二次大戦後の54年5月のことで、発足以来のメンバーである。アジアの中では香港、マレーシア、タイ、イランなどと並ぶ紛うことなき古参の部類で、本来ならもう少し「古色蒼然」を鼻にかけてもよいくらいだ。

 日本サッカー協会(JFA)史を知る上での有益な文献がある。うち一冊は74年2月発行の『日本サッカーのあゆみ』(講談社)で、もう一冊は、96年9月発行の『財団法人 日本サッカー協会75年史』(発行:日本サッカー協会/発売:ベースボールマガジン社)である。いずれも立派な函入りの高価格本で『75年史』は重さ2・5キロ。編集委員会の進行役をベースボール・マガジン社出版部が担っている。編集委員会のメンバーは7名いて、編集長役を日本サッカー殿堂の委員を経たあと07年に他界した共同通信運動部OBの奈良原(旧姓・鈴木)武士(故人)が務めている。

 これら基礎史料2冊に、『古河電工サッカー部史|日本サッカー界の礎を築いた人たち|』(発行:古河電工サッカー部OB会/04年)のような稀覯本を読み解くことでJFAの歴史がより立体的に見えてくる。

 比較的最近の内部事情をうかがい知るには、スタジオダンク編・著『サッカーでメシが食えるか? 2』(ノースランド出版/06年)のような本もおすすめだ。ただ表題とは裏腹、JFA職員の年収はSR(スペシャルレフェリー)以外は「非公開」が原則のようだった。しかしその後は、公益法人化した日本オリンピック委員会の報酬の開示があり、田嶋幸三専務理事(現・副会長)が「財団法人から公益財団法人になったら給料をオープンにしますよ」と「サッカー批評」52号(双葉社/11年)で発言したいきさつがある。そこで今回、「サイゾー」編集部に改めてJFAに確認してもらうと、「当時、田嶋は、公益財団法人になった際、組織として役員報酬を公表する義務があると認識していたため、上記の通り発言しました。しかし、実際にはその義務はなく、また日本サッカー協会としても現状では公表しないことで一致しております」との返答が得られた。JFAがすでに『役職員行動規範』で「開かれた協会・品質品位の追求」を掲げ、「スポーツ界最高のクォリティ」の表現をうたっているだけに、いささか心もとない印象だ。

 その昔、ぼくにとってJFAは東京・渋谷区神南にある岸記念体育会館(=日本体育協会)に入っている国際試合のチケットを買いにいく場所でしかなかった。サッカーが身近なスポーツとはいえなかった1960年代後半のことである。零細商店並の狭い部屋で東京五輪の年から90年代半ばまでをそこで過ごすしかなかったこと自体がサッカー界の苦難の歴史を物語る。

 だがJFAは、長沼健会長時代の94年にスポーツ団体が群居する神南を出ることに成功する。川淵三郎会長時代の03年9月には買い取った三洋電機のビルに転居し、東京・文京区本郷の地上11階・地下3階建てビルを「JFAハウス」と命名するにまで至った。

 だとすれば、その発展ぶりにいま少しの誇りや親しみを感じてもよいと思うのだが、漠たるJFA不信のようなものが負の伝統のようになってしまっている。ある日突然幹部がいなくなるという、スポーツ団体には珍しくない時効同然の”小悪”が過去にはあったにせよ、巨悪を抱える伏魔殿であるはずもない。ならば、ここまでにしたことに対する敬意が自然に湧き起らない理由は……。──それが今回依頼された、はなはだだきわどい原稿テーマなのである。

 結論から先に言ってしまえば、或る種のソフトパワー(やわらかな権力)への反発があるのかもしれない。それはマスコミ人の生理、条件反射と言い換えてもよいだろう。巨大資本である”丸の内御三家”主導の60年代から続く共存共栄の歴史とスポーツメディアとの親和性は考えられているほど高くはないが、一部の新聞、版元、ベテラン専門ライターとのコンビネーションの濃密さが、ニューカマーにとっては「一見さんお断り」体質のように映ってしまう。”丸の内御三家”とは、日本サッカー界において、JFAおよび日本サッカーリーグ (JSL) 内部に強い影響力を持っていた、三菱重工業、古河電気工業、日立製作所本社で構成される身内意識を指摘する言葉である。3社とも東京都千代田区の丸の内に本社を構えていたことに由来する。60年から90年代初頭までのサッカー日本代表監督の10人中の6人までもが65年のJSLの立ち上げに中心的役割を果たした。この御三家から輩出されていることでおよそのことは推察できるだろう。

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