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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第61回

命令ならばレイプまがいも権威への従属が招く暴挙

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雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。

『コンプライアンス』

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ある日、田舎のファストフード店に警察を名乗る男から一本の電話が入った。警官は、女性店員に窃盗の疑いがかかっていると言い、上司に身体検査を命じる。しかし、この電話はアメリカで10年にもわたって起こっていた「身体検査電話事件」のものだった……。

監督/クレイグ・ゾベル 出演/アン・ダウド、ドリーマ・ウォーカーほか 日本での公開は未定


「警察官のスコットです」

 2004年4月、人口1万2000人の田舎町、ケンタッキー州ワシントン・マウンテンのマクドナルドに警察から電話がかかってきた。

「お宅の店員に財布を盗まれたという人がいるんですけどね」

 副店長のドナ・ジーン・サマーズ(51歳・女性)は聞き返した。

「どんな店員ですか?」

「レジにいた、若い女性の……」

「ルイーズですか?」

「そうそう、そのルイーズが、カウンターに置かれた財布を盗んだと」

 そんな馬鹿な、とサマーズは思った。ルイーズはまだ18歳になったばかりの女子高生。時給600円で真面目に働いてきた女の子なのに。

「警察に協力してくれ。君が私の代わりに、彼女を身体検査するんだ」

『コンプライアンス(法令順守)』は、アメリカで実際に起こった、この「身体検査電話事件」を再現した映画だ。

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