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第1特集
奇形写真集からマジメな性科学まで

『チーム・バチスタ』の海堂尊先生もご推薦!! 医師のみが知る禁断の医学書ワールド

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──奇形の写真集や法医学テキストなどのビジュアル的にヤバいものから、医学界では否定された学説を大マジメに論じるトンデモ本まで、キケンな医学書の世界を硬軟取り混ぜて一挙ご紹介!!

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『スネル臨床発生学』(メディカル・サイエンス・インターナショナル)第19章「中枢神経系の発生」の中のあるページ。「脳に関係した異常」が、医学的見地に徹した、ひたすらドライな筆致でたんたんと綴られていく。すべての胎児が「正常」に生まれてくるわけではないのだ。

一般の人々にとって医学という学問は、病気やケガなどの際、しばしばお世話になるわりに、どこか近寄りがたいものを感じる存在だ。やはりそれは、「死」や「病気」、「性」といった、人間にとって根源的な、にも関わらずタブー視されている諸問題を扱う学問だから、という理由によるところが大きいのではないだろうか。

 それは、医学書についても同じこと。医学書というものは、お医者さん(とそのタマゴ)という“選ばれし賢者たち”の手による彼ら自身のための読み物であって、一般社会からは切り離されたものだ、と感じている人が多いのではないだろうか?

 だが、そういう心理的なハードルを乗り越え、いざその領域に足を踏み入れてみれば、そこにはあまたの医学者たちの叡智と研鑽の成果を結集して創り上げられた深遠なる世界が広がっており、生物としての人間のリアルな姿を垣間見ることができる。それはもういろいろな意味で非常に”ヤバい”内容の宝庫なのである。本稿では、そうしたディープかつデンジャラスな“医学書ワールド”を、医師をはじめとする医学関連書籍に造詣の深い方々の協力を得てのぞいてみるとしよう。

 まずは、ヤバい医学書と聞いて誰もが真っ先に思い浮かべるであろう「ビジュアル的にヤバい本」から。その代表格が、「アトラス」と総称される人体や組織の図表集だ。例えば『新 先天奇形症候群アトラス』【1】は、さまざまな先天奇形を写真入りで詳細に解説したもので、当然、専門の医師にとっては必読書だが、フツーの人なら積極的に見ようという気にはなれないたぐいの本だ。

 Ai(死亡時画像病理診断)を専門とする医師にして、『このミステリーがすごい!』(宝島社)大賞を受賞、その後映像化もされ、累計1000万部突破の大ヒットとなった『チーム・バチスタ』シリーズや『玉村警部補の災難』(12年、共に宝島社)など数々の著作を持つ作家でもある海堂尊さんが推薦する『スネル臨床発生学』【2】も、そういう見た目のインパクトの強い一冊である。海堂さんの説明によると、受精から赤ちゃん誕生までの各プロセスにおいて、どんな問題が起こると奇形が生じるのかを丹念にまとめた名著、ということなのだが、やはり素人だとページを開くのに少なからず勇気とガッツを要する。

「一般の人がこういう本を読むことの意義は、2つあります。まず、一種のワクチン的な作用。つまり、もし自分の子どもが奇形だったとき、それがまま起こり得るものであることを事前に知っているのと知らないのとでは、受ける衝撃がまったく違いますからね。そして、正常であることの素晴らしさは、異常を知ることによって初めて理解できるのです。

 それからもうひとつ、こうした本を通して、医学という学問は、事実を直視するものであり、だからこそ本質的にエグいものなのだ、という事実を知るのも大切なことだと思います」(海堂さん)

 なるほど。例え初めは下世話な興味でこうした本を手に取ったとしても、最終的に医学というものの実際の姿を理解できるようになれば、それはそれなりに価値ある行為だというわけだ。ネットでグロ画像収集にいそしむだけの好事家たちにも聞かせたい、重みのある言葉である。

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