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ある芸人の赤裸裸笑(小)説「ニューヨーク戦記」第12回

「すべてに片をつけるため、死なない程度に殴られろ!」

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〈前回までのあらすじ〉
英語とコメディを学びに、単身ニューヨークへ渡った芸人・中牟田秀直。勉学とコメディの実践に励む中、日本に置いてきたスキャンダルに苦しめられたり、現地で危ない目に遭ったりした彼の、1年2カ月にわたる武者修行生活が、終わりを告げようとしている──。

 NY留学も終わりに近づいた頃、中牟田は日本人の友人から「最後に、NYにあるピアノバーに飲みに行きましょう。ネタにしていってくださいよ」と誘われた。男同士の誘いに快く乗ったのだが、ここでも中牟田はちょっと面倒に巻き込まれた。ピアノバーは日本でいうキャバクラのことだ。NY在住の日本人女性がホステスで、客もほとんどが日本人男性の、日本人による日本人のための憩いの場である。そこで2時間ほど酒を飲んで帰ったのだが、後日、そこにいたホステスが、彼女が通っている語学学校内で、「中牟田が店に来たんだけど、外で待ってて、しつこく『一緒に帰ろう』って、タクシーに押し込もうとするんだよね。あの糞芸人、マジ変態。全然懲りてない」と、ガセネタを広めていたことが判明したのだ。これには参った。完全な事実無根だ。これから日本に帰って記者会見をやるというときにそんなデマを広められたら、隣町からも消防隊を呼ばなければいけないくらい、噂の火消しで一斉出動だ、と中牟田は肝を冷やす思いだった。

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