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第1特集
不幸なのはゆりしーだけじゃない!

「事務所にとってはオマケ」 声優 悩ます業界"珍体制"

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イヤなものはイヤ、とさえ言えない環境じゃ、いい作品だってできません。

 落合祐里香(通称:ゆりしー)という女性声優をご存じだろうか? アイドル育成ゲーム『THE IDOLM@STER』などに出演する一方、声優ファンの間では "不幸体質"として有名な人物なのだが、彼女がつい先頃、新たな伝説を刻んだとして話題になった。昨年5月から行っていた12カ月連続CDリリース企画において、かかわったレコード会社2社のうち1社が倒産、さらに同企画の出資元で、彼女も昨年12月まで所属していた元氣プロジェクト(以下、元氣プロ)が声優事業から撤退してしまったのだ。もっともこの撤退については「企画が成功すると踏んだ、同プロ・岡本邦裕社長の手腕が原因」との見方が強いが……はたして真偽のほどは?

「落合さんの企画が直接的な原因ではないでしょう。所属者の多くが俳優の元氣プロは、声優のマネージメントを行う事業者が組織する日本芸能マネージメント事業者協会内で比較的弱い立場だったこともあり、声優事業では伸び悩んでいました。所属声優への支払いも滞るなど、タイミング的に潮時だったのでは」(声優業界関係者A氏)

 現在、声優業界はこの「日本芸能マネージメント事業者協会」(以下、マネ協)、音声関連の制作会社の組織「日本音声製作者連盟」(以下、音声連)、そして声優の多くが所属する「日本俳優連合」の"三つ巴"によって成り立っており、明確な取り決めがあるわけではないが、「音声連加盟のアニメ制作会社が行うオーディションの情報は、マネ協所属の声優事務所にしか来ない」(A氏)といった実情がある。

MEMO声優
アイドル声優が次々生まれ、イベントなども組まれているが、大御所男性声優・神谷明の『名探偵コナン』降板騒動で話題になったように、ギャラの安さなど、待遇面ではいまだ改善が進まない。

「岡本社長は、そういった事情に疎かったのかもしれませんね。確かに声優業界も芸能界の一部ではありますが、声優事務所と芸能事務所では体制に大きな違いがある。芸能事務所は販促費用をかけて新人の売り出しを図るものですが、大半の声優事務所はそんなこと一切しません。多くの場合、声優事務所はその下にある養成所の"広告塔"として成り立っているため、所属声優自体は"オマケ"に過ぎない。養成生からの受講料は定期的でカタい収入になります。大手声優事務所・アーツビジョン付属の日本ナレーション演技研究所など、通年数千人の生徒を抱えていますから。声優はどんな売れっ子でもアニメ1話分の出演料がたった数万円なので、事務所も営業や育成には本腰を入れないのです。これでは役者としての自覚も育たない」(前出・A氏)

 また、声優業界といえば、07年にアーツビジョンの松田咲實社長(当時)が、オーディション受験者へのセクハラ行為で逮捕されたが、前出のような業界の構造が「そうした事件の温床になっている」とアニメ制作会社に勤めるB氏は指摘する。

「きちんとマネージメントしてもらえないけど、事務所を退社すればオーディションが来なくなる。事務所やマネージャーの言うことを聞くしかないと思っている声優は多い。だから現場でも、監督や製作陣に対してイエスマンになってしまうんです。それで良い作品を作れるわけがないんですが……」

 事実、宮崎駿をはじめ、こうした内情に辟易して、俳優をキャスティングしたがる制作側は増えているという。

「ただ、今後、平野綾のように、普通の芸能事務所に所属する声優が増えてくれば、業界も変わってくるかもしれません。制作側からしたら、作品の宣伝にも積極的に協力してくれて、役者としての自覚を育てさせる一般的な芸能事務所のほうがありがたいわけですから」(前出・A氏)

 改革の時機はとっくに来ていることを、声優業界はそろそろ自覚すべきだ。
(アボンヌ安田)


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