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第2特集
「変態性欲と犯罪」......その危険なカンケイ【4】

論理学者が徹底検証!「衝動を抑えられない性的倒錯者はAV男優として活躍を」

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トイレ盗撮AVの自称"日本一"のマニアでもある論理学者・作家の三浦俊彦氏に、自ら性的倒錯を抱えた者のみが知る自己への"対処法"を聞く。

──スカトロジストであることを公言していらっしゃる三浦先生は、ご自身の経験から、性的倒錯が昂じて、ついに重大犯罪へ至ってしまった「自殺サイト殺人」をどう分析しますか?

三浦俊彦(以下、) おそらく、環境に恵まれていなかったんじゃないかと思います。現実の殺人行為にしかはけ口を求められなかったという意味でね。たとえばAVは、犯罪を誘発するものとしてよくヤリ玉に挙げられますけど、実際にはまったく逆で、むしろはけ口となって犯罪を抑止する効果が高い。性欲を抑えられず、犯罪に走りかねない人が、AVで疑似体験して救われるケースは確実にあります。もし見るだけで満足できなければ、自ら出演する手もある。犯罪傾向のある性的倒錯の大半は、そういう代償行為で満足できるのに、彼にはそういう機会がなかったんじゃないでしょうか。

実際、私の知人で、学生時代に女子トイレの覗き行為で何度か捕まった男がいるんですけど、彼の場合、スカトロ系AVに出演するようになって以降、危険を冒してまで覗こうという気持ちはまったくなくなったそうです。その後、質の高い覗きビデオが出回るようになり、40歳を越えた今は、それらで完全に満足できていると言っていました。人間は、加齢とともに必ず性的エネルギーが落ちますから、そうした方法で一定期間しのげれば、普通の市民生活に戻れるんですよ。

──ただ、性的倒錯には無数のジャンルがあります。中には、小児性愛のように、疑似体験の難しいものもあるのでは?

 確かに、小児性愛や極端なサディズムのような倒錯はやっかいですが、人間は完全なリアルでないと満足できないかというと、必ずしもそうではない。いかにもリアルに見える設定であれば、疑似体験でも十分満たされるんですよ。どう見ても子どもとしか思えないロリータ系の女優やミゼットの女性、相当ハードなプレイや屈折したフェチでも率先して引き受けるAV女優もたくさんいるし、厳重な監視下で極限までやらせれば、ほとんどの性的倒錯に対応できると思います。

また、自分はこのままでは危ないと自覚している人や、性犯罪歴のある人のために、相談窓口を設けて、AV業界に男優として紹介するシステムを作るのもいい。AVの制作側も、彼らを出演者として積極的に採用すれば、よりリアルで迫力のある作品を作れるし、犯罪の抑止という社会貢献もできる。一石二鳥です。

──現実には、性的倒錯だけでなく、ノーマルな性癖の持ち主が性犯罪を引き起こすケースもたくさんありますよね。

 そう。レイプなどは、まさに正常な性欲の暴走ともいえるし、むしろ倒錯的な欲求のほうが害が少ないほど。スカトロジストなんて無害なもんです。とすると、そもそも「異常性欲」とはなんなんでしょう? 試しに1960年代頃の百科事典を開くと、「異常性欲」の項目にフェラチオやクンニリングスが分類されています。今では、そんなものを異常と見なす人はいませんが、当時は、生殖につながる行為以外は異常である、という認識だったんですね。SMなんかも急速に市民権を得て、今や小学生でも平気で口にしますよね。要するに、「正常」と「異常」の定義なんて、きわめて曖昧なものなんです。最終的には、実害のある性癖だけが、「異常」として残るんじゃないかと思いますよ。

──つまり、本質的には、「正常」と「異常」に境界などないわけですね。

 その通り。にもかかわらず、「異常」性欲は悪で危険だという偏見の目で見るから、当事者はこそこそしがちで、犯罪にも走りやすい。性欲に良いも悪いもないんですから、どんな性癖でも認めて発散の場を用意し、その内部では、AVのモザイクのような規制をすべて取り払って、ドンドン発射させるべきです。他方、コンビニなど公共の場からは性的なものを完全に撤去するなどして、すみ分けをきっちりすることも必要でしょう。

最近の厳罰化の影響もあって、性犯罪に対する法律的・社会的な制裁は厳しくなっていますが、個々人の性的倒錯に対する認識は、先ほどのSMの例のように、逆にどんどん寛容になっています。ことに現代はインターネットがありますから、特殊な性癖を持った人たち同士をつなげやすい。将来的には、結婚相談所のようなサイトで、相手に望む条件の欄に、「スカトロ趣味のある方」と堂々と書けるような社会も、十分あり得ると思います。

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三浦俊彦(みうら・としひこ)
1959年、長野県生まれ。東京大学大学院修了後、和洋女子大学専任講師に就任、現在は教授。美学、論理学の研究の傍ら、『M色のS景』(河出書房新社)で小説家デビュー。『これは餡パンではない』(同)などで芥川賞候補3回。『のぞき学原論』(三五館)で、トイレ盗撮AVのマニアであることが判明。


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