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第1特集
「手軽」「安上がり」からカリスマダイエッターの到来まで

一発当たれば類書が百花繚乱 売れ筋ダイエット本の傾向と歴史

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──"健康は最後の宗教"……ではないが、厚生労働省が腹囲偏重なメタボ対策を張り切って推進中なことも関係してか、ダイエットへの関心はこれまで以上に老若男女を問わず年々高まっている。ここでは現在売れているダイエット本の傾向と歴史をひもといてみたい。

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某書店のダイエットコーナー。

 ミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントによる『世界一の美女になるダイエット』【1】は発売わずか1カ月で17万部突破し、海外セレブが支持するカリスマのダンスエクササイズ『ザ・トレーシー・メソッド』【2】もブレイクの兆しを見せ、お笑いタレントくわばたりえ、グラドル磯山さやかの成功体験がじわじわ実を結んだコアリズムは、『クワバタのくびれダイエット』【3】が出版され、10万部……。そんな現在売れているダイエット本をざっくり分類すると、主流は「フィットネス系」「食系」「メンタル系」の3つに分けられるようだ。

 フィットネス系はコアリズム関連やヨガなど、身体を動かしてカロリーを消費し、適度な筋肉をつけるもの。食系は、一世を風靡した"朝バナナダイエット"に代表される食生活を改善するタイプ。そしてメンタル系は50万部超えのベストセラーとなった『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)のように、脳科学や心理学の面からアプローチしたものだ。

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「ラクして痩せたい」願望に取り憑かれている万年ダイエッターは、いつだって移り気だ。次々にわいては消える流行を受けて、書店のダイエット棚も他ジャンルより入れ替わりが格段に早い。
「ダイエット本の傾向として、すぐに類書を出しやすいということがあります。その結果、パイが多い分、実売が割れてしまう。なので、新たなブームが来たからといって、テレビ局や出版社などのマスコミが得をしているわけでもないんですよ。不況のこの時世、類書のみに頼る出版社も多いですしね(笑)」(中堅出版社・書籍編集者)

 それにしても、こんなにも多種多様なダイエット本が登場するようになったのは、いつ頃からなのだろう?

「日本でダイエットブームが本格化した80年代からでしょう。好景気に沸くバブル前夜、空前のエアロビクスブームが巻き起こったのが始まりです。85年頃にはエアロビの聖地と呼ばれた原宿を中心に、レオタードなど関連グッズが飛ぶように売れていました。女性のスタイルに対する美意識は高まる一方でしたが、だからといって誰もがスタジオに通えるわけではない。そこで登場したのが食生活を改善するダイエットです」(健康雑誌編集者)

「3日間で確実に痩せられる」と評判を呼んだリンゴダイエットが流行したのは87年頃。3日間毎食リンゴのみというこの極端なダイエットは、手軽さとインパクトで一躍大流行するが、ほとんどの人が途中で飽きてリタイア。その後も卵、こんにゃくなど、対象を替えた単品ダイエットが次々に現れる。

 バブルがはじけた90年代には、ちまちまとした小市民的ダイエットが流行し始めた。

「91年の耳ツボダイエットが話題になったのを皮切りに、ラップダイエット、風船ダイエットなど、身近なアイテムを使ったダイエットが百花繚乱。また、身近な食材をダイエット的視点から見直したことで、92年頃からはヨーグルトダイエット、唐辛子ダイエットなどが盛んになりました」(前出・健康誌編集者)

 こうした中、余分な糖分をカットしてくれるギムネマ、脂肪を吸収してくれるガルシニアなどのサプリ系の広告も女性誌を賑わせていた。

カリスマが跋扈するゼロ年代のダイエット事情

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 90年代後半からはとにかく「ラク」「手軽」「安上がり」がダイエットのキーワードになる。その流れを受けて誕生したのが、『発掘!あるある大事典』(フジテレビ系/96~07年)、『スパスパ人間学!』(TBS系/99〜05年)などの健康情報バラエティ番組だ。とりわけテレビの影響力はすさまじく、寒天、豆乳、黒酢やもろみ酢、ゴーヤ茶など、番組内でダイエット食材として紹介されたものは、翌日にはあっという間に売り切れて店頭から姿を消すという異常事態にまで発展。番組公式ダイエット本も続々発売、書店を賑わせた。

「その後、スローライフやロハスといったキーワードに象徴される、健康や環境に配慮するライフスタイルが一般にも浸透。必然的に、ダイエットもスローかつ健康的なものにシフトし、静かなブームだった骨盤体操やヨガ、ピラティスなど、長い歴史を持つ運動系のダイエットが主流になり、国内にも続々とカリスマが登場しましたね」(前出・健康誌編集者)

 整体師・大庭史郎氏による『1分骨盤ダイエット』(三笠書房)が2008年上半期本ランキングの美容・ダイエット部門1位、福岡から上京して大ブレイクしたシングルマザーSHINOによる『1日5分でくびれボディ 美腰ダイエット』【5】は同2位に。健康運動士の植森美緒による『美へそダイエット』【4】も、アマゾンの人気ランキング上位に位置するなど好調な売り上げを見せている。

 そんな中、ダイエット界に激震を走らせたのが、冒頭でも紹介した岡田斗司夫の『いつまでも~』だ。食べたものをメモするだけというレコーディングダイエットを軸に、1年で50キロ減という驚異的なダイエットに成功した岡田氏の衝撃ビフォーアフターは世間の度肝を抜いた。岡田氏は、メタボに悩む中年の星としても注目を集め、ベストセラーになった同書は、公式手帳やDSソフトにもなって大ヒット。それまでいまひとつ地味だったメンタル系ダイエットの分野にも大きな足跡を残し、「岡田斗司夫もこの本で痩せた!」と帯にうたったマンガ家の赤星たみこによる『ミネラル豆乳ダイエット』【8】もロングセラーへと押し上げた。

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 同時期、今度はエクササイズ界に黒船が到来する。米軍の基礎訓練をベースにした鬼軍曹ビリーによる超ハードなエクササイズ、「ビリーズブートキャンプ」だ。同DVDの映像は動画サイトで話題となり、なんと150万セット以上の売り上げを突破して社会現象となるも、ブームは大方の予想通り、夏が終わる前にあっさり収束した。

 同じくネット発で話題を呼んだダイエットといえば、06年、mixiから生まれた『朝バナナダイエット』だ。朝バナナダイエットのmixiコミュニティには現在も約2300人が参加中。書籍の売り上げも好調でシリーズ化・文庫化され、一時はスーパーの店頭からバナナが消える騒ぎにもなった同書は韓国・台湾でも翻訳出版され、ソウルの大手書店ではジャンル別売り上げの1位にランクイン。また、『キウイ呼吸ダイエット』【7】をはじめ、夜キャベツ、夜トマトなど、ほかの野菜や果物も追走中だ。

 鬼軍曹の次はバナナだったりと、一発当たればデカいが脈絡がないのがダイエット業界の常。確かなことはひとつ。現代人にとってダイエットはもはや正義であり、カルトだという事実だ。
(文=阿部英恵、絵=カズモトトモミ)


【1】『世界一の美女になるダイエット』
エリカ・アンギャル/幻冬舎(09年)/1365円

ミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントによる食生活改善書。大仰なタイトルの割に中身は至極まとも。美女にはなれなくとも確実に長生きできそうな食アドバイス満載。


【2】『ザ・トレーシー・メソッド DVD Book
トレーシー・アンダーソン/マガジンハウス(09年)/3000円

マドンナの専属トレーナーにして"女ビリー"の前評判も高いカリスマによるダンスエクササイズDVDが上陸。補助筋を鍛えることで、しなやかなダンサーボディを作ることが狙い。


【3】『クワバタのくびれダイエット』
くわばたりえ/アスコム(09年)/1365円

テレビ番組の企画でウエスト20cm減に成功したクワバタの変身ぶりが話題となり、コアリズム人気にも火をつけた一冊。痩せたクワバタの水着グラビアが意外にエロい。現在10万部突破。


【4】『美へそダイエット』
植森美緒/高橋書店(08年)/1155円

たるんだ下腹を引っ込めるには"へそ"まわりのインナーマッスルを鍛えるべし。産後太りママや中年女性を中心に絶大な人気を誇るダイエットセミナー講師の、最新痩せメソッド。


【5】『1日5分でくびれボディ 美腰ダイエット』
SHINO/幻冬舎(07年)/1365円

48歳二児の母にしてウエスト56cm。「愛もハッピーも美腰から!」「世界で最も尊いものは私たちのカラダ」と断言するカリスマSHINOによる、20万部突破の骨盤エクササイズ。


【6】『シャングリラ・ダイエット』
セス・ロバーツ/フォレスト(08年)/1050円

オリーブオイルと砂糖水の摂取によって食欲が抑えられるという、肥満大国発のユニークダイエット。「小腹がすいたらオイルをひと飲みすればOK!」って、いかにもアメリカ的思考。


【7】『キウイ呼吸ダイエット』
キウイ健康美容委員会編/主婦と生活社(09年)/1050円

バナナの次はキウイ?腹式呼吸+キウイ朝食のコラボ技で腸のデトックス効果を高めるダイエット。ジャガー横田の夫がテレビで実践、6.8キロ減に成功したことから話題沸騰中。


【8】『ミネラル豆乳ダイエット』
赤星たみこ/小学館(04年)/1260円

1日1回野菜ジュースに豆乳を混ぜて飲むだけ。超運動不足のマンガ家が実践したお手軽ダイエットが岡田斗司夫をも魅了。04年の発売以来、着々と版を重ねる隠れたロングセラー。


【9】『NHKためしてガッテン流 死なないぞダイエット』
北折一/メディアファクトリー(09年)/1365円

『ためしてガッテン』ディレクター考案によるメタボリーマン向け"計るだけ"ダイエット。「美醜のためでなく死なないために!」という明確すぎる中高年向けメッセージが切ない。


【10】『読むだけでやせる!3行ダイエット』
戸田晴実/主婦の友社(09年)/1050円

「寝てる間にラクに痩せる方法ある?」ダイエットにまつわるワガママなQ&Aを見開きで超簡潔にまとめ、若槻千夏もハマッた"読むだけダイエット"本。意外と男女問わずタメになる。


【11】『恐怖のカロリーブック』
岩崎啓子/主婦の友社(09年)/1050円

「噛まない女はデブ」「濃い味好きな女は一生太りっぱなし」etc...。ダイエット本らしからぬキツい口調×黒地ゴス系デザインでひたすら恐怖を煽り立てる、異色カロリーブック。



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