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第1特集
【お笑い座談会】消える芸人、売れる芸人......バラエティ悲喜こもごも

ナベアツ、エド・はるみ、髭男爵......ブレイク芸人たちの今年を占う!

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『レッドカーペット』『あらびき団』などのネタ番組に、もはや視聴者は食傷気味。また、ダウンタウン、とんねるずなどの大御所の冠番組すら低視聴率の憂き目に......。そんな閉塞したお笑い界の不満と愚痴を、テレビ局ディレクター、放送作家、芸人などの関係者がぶちまける!

[座談会出席者]

A......フリーの放送作家
B......民放テレビ局ディレクター
C......お笑いプロダクション社員
D......中堅お笑い芸人

A 昨年は『爆笑レッドカーペット』(フジ)、『ザ・イロモネア』『あらびき団』(ともにTBS)といった、短い時間で何組もの若手芸人が登場して、ネタを演じる「ショートネタ番組」が大流行したね。この流れは今年も続くのかな。

B あの手の番組は安く作れるからね。出演している若手芸人のギャラは本当に微々たるもので、ひとネタにつき3000~5000円というのも珍しくない。「番組制作費の削減!」というフレーズが制作会議で何度も叫ばれる昨今のテレビ業界にマッチしているんだろうね。

D 芸人の立場からしてみれば、ギャラは安くとも、テレビ出演の機会が増えてアピールの場になりますから、すごくありがたい面もありますよ。もちろん、スベったら最悪ですけど。

C それに関連した話でいうと、最近、日テレの『しゃべくり007』が好調みたいだね。ネプチューン、くりぃむしちゅー、チュートリアルがスタジオでフリートークをするだけの番組なんだけど、これが視聴率的にはかなり好調で、裏番組の『SMAP×SMAP』(フジ)を脅かす勢いなんだとか。

B もともとあの枠で放送されていたのは『オジサンズ11』という、徳光和夫、福留功男、露木茂、小倉智昭といった錚々たる大物司会者たちがレギュラー陣として名を連ねていた番組。一説によると、この改編によって日テレが浮かすことのできた制作費はワンクール2億円ともいわれている。ギャラの高い大物司会者がリストラされて、安くて使いやすい芸人が重宝されるというのは、今のテレビ界を象徴するような出来事だよね。

C 景気が悪いのは、先の年末年始の番組編成を見ても明らかですよ。大みそかや正月の昼間なんかでも、普通に再放送の番組をやっていたりする。これだけ再放送の多い年末年始というのもやっぱり珍しいよね。これは、お金の面だけじゃなく、番組そのものを作る力さえなくなってきている証しでもある。

B あと、経費削減で余分なタレントの起用を減らして、女子アナをどんどんタレント化させている、という動きも昨年は際立った。日テレの『サッカー クラブワールドカップ』のマスコットガールは、以前までは上戸彩がやっていたんだけど、今年は女子アナユニット「go! go! ガールズ」が務めていたし。

A なんともわびしい話だけど、僕らフリーの人間にとっては他人事じゃない。実際、放送作家のリストラも着々と進行している。つい数年前までは、ゴールデンの番組1本に作家が10人以上つくことも当たり前だったけど、今は6~7人程度。会議で出される弁当もなくなって、お茶とお菓子だけなんてこともあるし(笑)。やる気なくしますよ。

B ただ、正直言って、ネット上や報道なんかで騒がれているほどには現場の人間に危機感はないよね。目の前の仕事が忙しすぎるというのもあるし、景気が悪いのを知ったからといってどうにかなるものでもないし。黙々と仕事をこなすだけで精いっぱい、というのが現状ですね。

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業界内で注目される今年売れそうな芸人たち

C お笑い界の話題では、昨年末の『M-1グランプリ』(テレ朝)を制したNON STYLEの業界内での評判ってどうなんですかね? M-1のときには、フリートークができないということをさんざんいじられていましたけど。

A いや、あれは上沼恵美子さんのリップサービスでしょう。ノンスタはもともと関西でレギュラー番組9本を持っていたくらいの実力派で、関西のテレビ業界での評判はいいんですよ。ツッコミの井上裕介がとにかく器用。のみ込みが早くて、打ち合わせでもすぐにこちらの意図を理解してくれる。MCもロケもトークもこなせるタイプですよ。M-1優勝を足がかりにしてこれからは東京でも売れていくんじゃないですかね。

D M-1ではイマイチだったけど、「暇を持て余した神々の遊び」のネタで昨年ブレイクしたモンスターエンジンはどうですか?

B 彼らもどちらかというと、器用なタイプだよね。2人ともピン芸でも笑いが取れるし、漫才もコントもこなせるし。

A 彼らの場合、今後売れるための鍵となるのは、自分たちのキャラを明確にするってことじゃないかな。

 例えばチュートリアルの場合、ある時期から福田が自分のことを「顔テカテカの不細工キャラ」と位置付けて、徳井を「男前キャラ」として押し上げて売り出していったじゃない? ああいったやり方で、モンエンも大林のほうを男前キャラにして、西森が不細工というイメージでいったほうが、視聴者にとって、わかりやすいコンビになるのかもしれない。

D ほかに今年売れそうな注目の芸人っています?

C 僕の一押しは夙川アトムですね。彼は、サングラスに肩掛けセーターという古くさいテレビ業界人をモチーフにしたキャラのひとりコントが持ちネタ。それで『めちゃ×2イケてるッ!』(フジ)の「笑わず嫌い王決定戦」にも出て、ブレイクしかけていたんですけど、売り出し方をめぐって所属していた事務所と対立してしまった。結局、そのまま辞めて、半年間干されることになったんです。

A どこの事務所だったの?

C ソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)ですね。夙川は、SMAでも有名な敏腕マネージャーHさんの逆鱗に触れてしまったみたいで、Hさんがテレビ局に「夙川を使わないでほしい」という通達を出したそうです。でも、その謹慎期間も昨年12月で終わったはずなので、これからはどんどんテレビに出てくると思いますよ。今は大竹まことらが所属しているASH&Dに入りました。彼は業界人キャラ以外にもたくさんネタの引き出しがあるし、今後は順調にブレイクするんじゃないですかね。

D 僕が密かに注目しているのはアルコ&ピースですね。コント芸人なんですけど、ネタがしっかりしていて、ライブで直接会ったときにも、いかにも売れそうな感じのいい雰囲気を持っていました。

A 僕は、もはや中堅ですけど、サバンナの高橋茂雄に注目してますよ。『アメトーーク!』(テレ朝)の「中学の時イケてないグループ芸人」や「太鼓持ち芸人」という企画で、彼のキャラクターの面白さが見事に開花してたよね。ああいう面を出せるようになったのは大きいんじゃないかな。

C ただ、高橋はもともと関西向きの芸人なんですよね。いかにも大阪のオバチャンにウケるような愛想のいい関西の兄ちゃん、っていう感じで。本人もそれをわかっているからこそ、拠点を東京に移さずに今でも大阪で活動してるんじゃないですかね。

"消える芸人"ダントツはやっぱりエド・はるみ

D じゃあ売れそうな芸人とは逆に、皆さんから見て「今年消えそうな芸人」っていますか?

B あまりいい噂を聞かないのは、エド・はるみだね。「グー!」みたいな低レベルな一発ギャグしかネタがなくて延々それをやり続けているし、フリートークも全然できていない。そのわりに、スタッフに対する態度も悪い。使いにくいこと、この上ないよ。

A エドの場合、普段は無愛想なくせに目上の人間だけには露骨に媚びを売るっていうところがあって、そういうのが余計に嫌われる要素になっているみたいだね。まあ、あの年齢になってから急に売れてしまって、本人もどうしたらいいのかよくわかっていない、っていうところもあるんじゃない? 

D ひと皮むけば、ただのオバさんってことだろうね。 

B その一方で、「消える」と言われ続けているけど、意外にしぶといのが小島よしお。彼はああ見えて「一発屋」というイメージをうまく利用して立ち回るしたたかさがある。話してても自分の見せ方をよくわかっている、頭が切れるタイプだなと思うよ。

C それに、小島よしおって、所属はサンミュージックだけど、吉本の先輩芸人さんたちとも積極的に飲みに行ったりしてるんですよ。これって、吉本じゃない芸人さんにはなかなかできないことで。そういう政治的な立ち回りもうまいので、このまま生き残りそうな感じはしますね。

D 早稲田大学卒業という学歴もうなずける賢さがありますよね。

B 女芸人でいえば、柳原可奈子なんかもしぶといね。笑いに対してもこだわりが人一倍強く、自分が面白いと思ったことしかやろうとしない、というなかなか強情な一面もあるみたいだけど。ちなみに彼女は、極度の潔癖性として有名だよね。寝泊まりするのは自宅だけ、と決めているみたいで、ロケなんかでもなるべく外泊を避けようとするらしい。

A でも昨年もっともブレイクしたのは、やっぱり世界のナベアツことジャリズムの渡辺鐘でしょう。直接付き合ってみると本当にいい人で、物腰も柔らかくて、誰にでも気を使えるタイプ。芸人としては今後どうなるのかわからないけど、応援したくなるよね。

B ナベアツは、あれだけ芸人としてブレイクしたにもかかわらず、放送作家としての仕事も以前と変わらず地道に兼業しているのがすごい。同じ作家として、どう?

A すごいとしか言えないよ。作家としても優秀だしさ。

D いい人と言えば、『あらびき団』でおなじみのハリウッドザコシショウさん。彼自身が苦労人だけに、後輩の面倒見がよくて、テレビのオーディションで落とされてしまうようなマイナーな芸風の若手芸人にも優しく接してくれる。「キング・オブ・あらびき」の異名は、ダテじゃないですよ。

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もはや惰性でしかないダウンタウンの音楽番組

C もっと大御所の芸人たちの、テレビ界での評判ってどうなんですか? ダウンタウンやとんねるずの番組は、軒並み数字が落ちているなんていう話も聞きますけど。

A いや、そうでもないよ。とんねるずの番組は一時期落ちたけど、また持ち直してきている。評判ほど悪くはないんじゃないかな。

B とんねるずは、数字が落ちてくると現場のスタッフを一気に入れ替えしてしまうことでも有名。一見すると昔から同じようなことをやっているみたいに見えるけど、そうやって新しい血を入れる地道な努力は続けている。

D あと、今の小中学生なんかに聞くと、とんねるずが「お笑い芸人」だっていう意識もあんまりないみたいですね。それで、じゃあ芸人ってどういう人? って聞くと、ナベアツとかエド・はるみと返ってくるらしいです。

A 大御所でいえば、ダウンタウンなんかも厳しい部分はあるね。 大みそかに放送された『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! 大晦日年越しSP!! 』(日テレ)は、数字も16%近くあって、ひと安心だろうけど、レギュラーの冠番組がイマイチ。とくに『HEY! HEY! HEY!』(フジ)の数字が落ちているというのは事実だし。彼らの場合、タモリさんとは違って、もともと音楽にそれほど興味があるわけじゃないから、本人たちのモチベーションもあまり高くないんだよね。最近は見たことある顔なじみのミュージシャンばかりが出ていて、新人なんかもあまり出ていないし、音楽番組としての存在意義は薄れている。

B ただ、あれに関しては、数字が落ちているからといって、その後釜として代わりにやるべき番組もない、というのが現状なんだよね。ほかの芸人を使っても数字が取れる保証はないし。

C 結局、テレビ局がなかなか冒険をできなくなっているんですよね。だから少しくらい数字が落ちている番組でも、それを終わらせることができない。

お笑い界を仕切るのは今年もやっぱり紳助!?

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『ヘキサゴン』発のユニット「羞恥心」は、お正月をもって活動休止。紳助は次も何かを企んでいるに違いない。

A たけし・タモリ・さんまのビッグ3も昨年も相変わらず活躍してたよね。フジテレビの『FNS27時間テレビ』ではさんまさんが総合司会として出続けていたし、日テレで3夜連続で組まれたビッグ3による開局55周年特番も高視聴率をマークした。

B たけしさんの番組は、『お笑いウルトラクイズ』(日テレ)を彷彿させる徹底したバカバカしい企画で、今のテレビの時流とは合わない感じもあったんだけど、それぞれに持ち味を出して意外と数字が伸びたんだよね。ああいうのは現場の人間にとってはかなり勇気づけられる。ビッグ3はまだまだ健在ってことだね。

C 昨年は『クイズ!ヘキサゴンⅡ』(フジ)から出てきた、おバカタレントが活躍しましたが、その裏では司会の島田紳助さんがプロデューサー的な立ち回りを見せていたと言われていますね。


B 『ヘキサゴン』の収録現場を見るとわかるんだけど、あの番組は本当にすべてを紳助さんが仕切って回している。テレビでは流れないけど、クイズを出す前に「次は早押し問題だから、わからなくてもとにかく早く押して思ったことを言え」などと、おバカタレントたちに細かく指示を出している。

A 紳助さんは、共演者を育てようとするよね。がんばっている人をきちんと評価して引き上げようとするところはあります。彼の副業や私生活の面で、週刊誌などでは悪く書かれがちだけど、プロデューサーとしての彼の手腕はもっと評価されてもいいと思う。

B 実際、クイズ番組以降の潮流として、芸能人が泣かせる話をする『人生が変わる1分間の深イイ話』(日テレ)みたいな"イイ話番組"のブームも作ったし。この調子だと、今年もテレビ界は紳助さんを中心に回っていくのかもしれないね。

(構成/ラリー遠田)


サイゾープレミア

2016年12月号