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第1特集
CIA、雅子妃、トヨタ、戦争......タブーに挑んだ本はおもしろい!

世の中の裏側にツッコんだ! ヤバい本・ザ・ベストセレクション

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──まずは、今年出版された本の中から、決してテレビや新聞では得ることのできない、各ジャンルの知られざる一面を描いたヤバい本を本誌が独断でセレクト。タブーを乗り越え真実に迫った描写は、どれも絶品。世の中の裏を知りたければ、まずはこの本を読んでおけ!

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(写真/渡部幸和)

日米スターの"定説"を剥いだ ファンにはフクザツ(?)な本

 今年は、世界と日本のスターにまつわる興味深い写真集&評伝が刊行されたが、まずは、『ジョン・レノン ロスト・ウィークエンド』。本書は、通称「ロスト・ウィークエンド」といわれる時代をジョンと過ごした女性が、当時のエピソードをお宝写真と共に明らかにしたもの。「この時期、ジョンはヨーコとの別離に打ちひしがれていた」「当時、ポールとは犬猿の仲だった」という従来の"定説"を覆すほか、前妻シンシアとの息子ジュリアンと写る貴重なツーショットなども初公開。意外とフツーのおっさんぽい姿(!)に、親近感もアップする……はず。他方、今もカリスマ的人気を誇る松田優作の評伝『越境者 松田優作』では、在日コリアンという出自に人知れず懊悩していた人気俳優の姿をあらわにするほか、彼が死を覚悟しながら『ブラック・レイン』の撮影に挑んだという"定説"に疑問を投げかける。特に、なぜ晩年インチキくさい新興宗教に傾倒したのか、闘病に当たっての告知や治療法が適切だったのかなどは、関係者が現存することを思えば(しかも、新興宗教を紹介したのは美由紀夫人の実母だという)通常はタブーにされてしまうところだが、あえて真実に迫った筆者の選択は間違っていない、と強く思う。あらためて松田優作のカッコ良さ&凄みを思い知らされると同時に、優作と丁々発止でぶつかり合った桃井かおりのエピソードを読んで、彼女を惚れ直すこと必至!

  
『ジョン・レノン ロスト・ウィークエンド』
メイ・パン:著/山川真理:訳/河出書房新社/2940円
世界的スーパースター、ジョン・レノンの空白の時代にまつわる従来の"定説"を覆したもので、ファン&ビートルズ研究者必読の一冊。妻オノ・ヨーコと別居していた1973年から75年にかけてのジョンを公私両面で支えた(手っ取り早くいえば、愛人だった)女性が、初めてその真実を明かす。


  
『越境者 松田優作』
松田美智子/新潮社/1680円
すでにその生涯が伝説化している松田優作の知られざる素顔を描き出し、芸能界のみならず、松田優作を知るすべての人に衝撃を与えた一冊。書き手は、彼の元妻でノンフィクション作家としても知られる松田美智子。いわゆる有名人の暴露本とは一線を画す、優れた評伝として刊行直後から話題を呼んだ。

著者は消されないのか?CIAをコキ下ろした大作

「匿名情報、噂の類は一切なし」を謳う本書は、5万点の機密解除文書といった一次資料、10人の元CIA長官を含む300人以上へのインタビューによる実名証言から、アメリカ最大の諜報機関の驚くべき実態を明らかにしたもの。先日、ブッシュ大統領が「(在任中の)最大の痛恨事は、イラクに関する情報の誤りだった」と語ったが、そのニセ情報=イラクは大量破壊兵器を保有しているという報告を上げたのがCIAだったことは周知の通り。本書を読めば、そんな失態も必然だったのだなぁ、と嘆息してしまう。というのも、その誕生当初からCIAは、無謀というよりはありえない作戦で失敗を繰り返し、しかも、それを教訓とするどころか、ミスを言い繕った挙げ句、ホワイトハウスには「成功した」と言い張ってきたというのだから。そのサマはほとんど喜劇だが、それによって工作員を含めた何千人もの人が無駄死にしたことを思うと、笑うに笑えない。組織内で権力闘争を繰り広げ、不正をはびこらせてきたという点では、日本の××省を彷彿とさせたりもする。ともあれ、アメリカの政治外交裏面史としても貴重な資料だ。

  
『CIA秘録』上下巻
ティム・ワイナー:著/藤田博司ほか:訳/文藝春秋/各1950円
CIAの実態を暴いて、アメリカ国内に衝撃を与え、今後、全世界にその衝撃を波及させていくだろう一冊。原書『Legacy of Ashes』は、全米で30万部のベストセラーとなり、全米図書賞を受賞。著者は長らく諜報分野の取材に携わり、1988年にピューリッツアー賞を受賞したニューヨーク・タイムズ記者。

『プリンセス・マサコ』とは違う!? 皇室の内幕を淡々と描く脅威

 タブーといえば、ロイヤル・ファミリーは外せない! ということで、この本。オランダやスペイン、スウェーデン、イギリスといったヨーロッパ王室が主に取り上げられているなか、やはり気になるのは日本の皇室に関する記述。昨年は、オーストラリア人ジャーナリスト、ベン・ヒルズ氏による『プリンセス・マサコ』が、宮内庁による抗議&出版社による刊行中止の大騒動を巻き起こしている(のちに第三書館が完訳本を出版)が、同書が宮内庁批判に熱を込めるあまり、「愛子さんは試験管ベビー」といった事実誤認を多く含んでいたのに対して、こちらはかなり冷静かつ客観的。そのぶん、ディープな皇室ウォッチャーにはすでに知られているエピソードも少なくないが、閉鎖的な皇室の環境のためにいかに美智子皇后、雅子妃が苦しめられてきたか、いかに宮内庁がそれに加担してきたかを皮肉を込めつつレポートしていて、宮内庁はさぞかし苦々しい思い(でも、事実だから抗議できない)だろうと推測される。正直、外国人がコレを読んだら、日本のイメージは下がるだろうから。そんな日本の章タイトルは「皇太子妃の涙──日本の雅子」。

  
『世界王室物語─素顔のロイヤル・ファミリー』
ギド・クノップ:編著/平井吉夫:訳/悠書館/2940円
皇室ジャーナリスト・松崎敏彌氏をして「これまで多くの人びとが挑戦しながらも、明らかにされることがなかった『聖域』を、初めて白日のもとにさらした、衝撃のレポート!」といわしめた一冊。世界5カ国の王室が抱える矛盾や、そこから生まれる苦悩をありありと浮かび上がらせる。

殺されかけながら書いたチェチェン侵攻の真実

 ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤ氏、元ロシア連邦保安局中佐アレクサンドル・リトビネンコ氏、と相次ぐ暗殺事件でその闇の深さを窺わせたロシア。08年は北京五輪開催中にグルジア侵攻を強行して世界中から非難を浴びたのは記憶に新しいが、そんなロシアの闇を暴くのが『ロシア 語られない戦争』。イラク戦争の実態がアメリカによる侵攻であるのと同様に、チェチェン戦争がロシアによる一方的な軍事侵攻であり、そのために自作自演の疑いが濃厚なテロ事件やチェチェン住民虐殺などの蛮行が繰り広げられてきたことを告発する。過酷な言論統制下のロシアにあって(前述の2人のほかに、政権批判した人が10人以上も暗殺されている!!)、取材を敢行し続けてきた著者はスゴい、のひと言。そんなチェチェンに興味を持った読者にお勧めなのが、『コーカサス 国際関係の十字路』。「コーカサスってどこ?」という基本情報に始まり、チェチェン戦争、ロシアによるグルジア侵攻の背景を知る格好の手引にもなっていて、大国による利権争いに翻弄されるこの地域がアンタッチャブルになってしまう前に一読しておきたい一冊だ。

  
『コーカサス 国際関係の十字路』
廣瀬陽子/集英社新書/735円
08年、おそらく日本人がいちばん知らない地域のひとつであるコーカサス(旧ソ連地域の一部)を情勢分析した一冊。現在、静岡県立大学国際関係学部准教授である著者は、旧ソ連新興独立諸国を体当たり取材した経験を持ち、『強権と不安の超大国・ロシア 旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)などの著書も。


  
『ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記』
常岡浩介/アスキー新書/780円
大国ロシアがひた隠す暗部を、日本人ジャーナリストがえぐり出す一冊。チェチェンへの潜入やロシア秘密警察による拘束など、命の危険にさらされながらの取材記録はまさに「渾身のルポ」。著者の友人で06年に暗殺されたリトビネンコ氏への貴重なインタビューも併録。

中国では発禁間違いない!中国人が生んだ芥川賞作品

 日本語を母国語としない作者による初めての芥川賞受賞作ということで、話題を集めた本書。1989年に起きた天安門事件前夜から北京五輪前夜までの約20年間を通して、民主化運動に情熱を傾ける中国人大学生の青春と挫折を描いているが、前知識ナシに読めば、「なぜこれがタブー??」と疑問に思うかもしれない(とりわけ30代以下の読者は)。読後の感想として真っ先に思うのは、本書の中で主人公やその友人たちが「愛国」や「革命」についてマジメに語り合う姿がなんともこっぱずかしい、というものだし、全共闘世代なら、「あの頃が懐かしい……」と目を細めるだろう(たぶん)。そんななんてことない(否定的な意味ではありません、念のため!)小説なのだが、しかし、周知の通り、天安門事件は中国にとって最大のタブー。中国文学研究者によれば、せっかくの歴史的な受賞にもかかわらず、タブーに挑んだがゆえに、本書が中国語に翻訳されて、中国内で出版される可能性は低いんだとか。文学的評価をめぐっても、芥川賞選考会で賛否が真っぷたつに分かれるなど、いろんな意味で物議を醸した一冊。ちなみに、中国嫌いで知られる石原慎太郎センセイは、もちろん(?)評価してません。

  
『時が滲む朝』
楊逸/文藝春秋/1300円
08年、日本文学界を揺るがせ、おそらく中国をも激震させた、ご存じ、第139回芥川賞受賞作。中国人がなかなか話題にしたがらない(できない)天安門事件に正面から取り組んだことで、中国では"発禁本"扱いになるだろうとみられている。

戦争画はかくも葬られてきた!封印を解かれたタブーな作品たち

 タブーを打ち破った、という点においては近年最大級かもしれない本書。アジア太平洋戦争下に従軍画家などによって描かれた戦争画は、これまで展覧会でも画集でも一覧されたことがなかったが、それはひとえに戦争美術を政府も美術界もタブー視してきたから。実際、編集の中心的存在である美術評論家・針生一郎氏は、戦意高揚を意図して描かれた作品が、戦後、その描き手や家族によって著作権を盾に公開を拒まれ、また、ようやく展覧会が企画されても、「アジア諸国を刺激する」として政府筋の思惑から見送られたと証言する。そうして歴史の闇に葬り去られつつあった作品群がようやく公開されたのは、「戦後60年以上たった今だから出せる」(編集者)との判断からとのこと。編集に携わった研究者の中には、「戦争を賛美するのか」と批判的な眼差しを向けられた人もいるそうだが、反戦的か否かといった画家の思想にとらわれず、表現された主題や画家の意図を検証することに努めたというだけあって、一見、「これが戦争画?」と思われるような抽象画なども、解説付きで紹介されていていて、素直におもしろい。ちなみに、戦争記録画の多くは、敗戦後、"戦利品"としてGHQに押収されたまま、今もアメリカから返還されていないという、驚くべき事実も。全国の公共図書館は、今すぐ本書を購入されたし!!

  
『戦争と美術 1937-1945』
針生一郎ほか:編纂/国書刊行会/1万5750円
これまで日本美術界が抱えてきたタブーを乗り越えて刊行された、初の本格戦争画集。アメリカから「無期限貸与」の形で東京国立近代美術館に収蔵された「戦争記録画」53点を含む、戦時下に描かれた戦争美術の代表作251点を収録し、美術関係者や史学研究者などの注目を集める。

トヨタ奥田の戯れ言の真意もわかる"貧困ルポ"

 最初にお断りしておくと、著者が「悲しみと怒りを込めて告発する」という本書は、なぜネットカフェ難民やホームレスが生まれるのか、なぜ日雇い派遣や非正規雇用が貧困を招くのか、などを当事者へのインタビューから浮かび上がらせる体裁を取っているため、ほとんどの企業名は伏せられている。そんな中での数少ない実名告発がトヨタ。サービス残業で過労死した正社員の妻が起こした裁判は、大メディアのほとんどが取り上げていないが、著者は、残業代をごまかそうとしていたトヨタの欺瞞と驕りを追及し、07年末に下されたトヨタ敗訴の判決に対してあたかも同社を擁護するかのような見解を発表した日経新聞をも批判する。トヨタといえば、先日、奥田碩・取締役相談役が、メディアの厚生労働行政批判について「マスコミに対して報復でもしてやろうか。スポンサー引くとか」と発言していたが、本書を読めば、この過労死裁判でトヨタのお膝元の労働基準監督署が、当初、トヨタ側に立って過労死した社員の労災を認めていなかったことがわかり、奥田氏がなぜ厚労省(労基署の所轄官庁)の肩を持つのかにも合点がいく。

  
『貧困の現場』
東海林智/毎日新聞社/1575円
昨今、表面化しつつあるものの、長らく隠されていた日本の貧困問題を告発する08年最新ルポ。10年にわたって労働問題を取材してきたという毎日新聞社会部記者が、日雇い派遣、非正規雇用、過労死、ネットカフェ難民、ホームレスなどの現場取材をもとに、何が貧困を拡大させているのかを浮き彫りにする。

「社説=匿名」の禁を破って朝日新聞の内幕を実名公開

 立花隆氏、田原総一朗氏も絶賛する本書を執筆したのは、かの読売主筆ナベツネを「変人」呼ばわりして、社内外から「オマエもな」とツッコまれたという逸話をお持ちの朝日の元論説主幹。のっけから、当時の社説を批判した産経新聞や「諸君!」「正論」への反論を展開するところなどは、まさに闘う姿勢全開だが、一番の読みどころは、やはり、「社説=匿名」という前提にあってこれまでタブーとみなされてきた社説作りの内幕を、新聞紙史上、初めて実名を交えて明かしている点だろう。たとえば、朝日といえば、95年にPKOへの自衛隊派遣、03年に有事法案の必要論を唱え、それまでの9条改正絶対反対的な護憲からの"変節"を指摘されていたが、主幹としてそれを主導したのが著者であり、少なくとも99年時点ではまだ社内でタブー視されていた改憲論議が、徐々にそうではなくなっていく過程が明らかにされていて興味深い。もっとも、全体に自画自賛のきらいがあるうえ、くだんの改憲論議や小泉構造改革の評価などをめぐっては、賛否両論があるかも。発行元が朝日ではないのもそのへんのビミョーな事情が絡んでいるのか!?

  
『闘う社説 朝日新聞論説委員室2000日の記録』
若宮啓文/講談社/1575円
これまで明かされたことがなかった新聞の社説作りの内幕を明かして話題を呼んだ一冊。著者は、02年9月から今年3月まで朝日新聞論説主幹を務め、現在は同社コラムニスト。ちなみに、"闘った"相手とは、産経新聞、読売新聞ほかの右派系メディアに加え、小泉純一郎、安倍晋三……といった時の首相など。

新旧"暴れん坊コンビ"のタブーなき名物対談

"タブーなし"を売りとする人気連載モノからのご紹介。おそらく本誌読者にはおなじみの2人による週刊誌時評『中吊り倶楽部』は、「ゲリラの戦闘をあれこれ論評しつつ、いつのまにか自らも銃を手に取ってゲリラ戦に加わっているようなもの」(宮崎氏)というように、スキャンダル報道を論じつつも、ときに週刊誌に先駆けてスキャンダル情報を伝えていて、知る人ぞ知る人気連載だったというのもナットク。また、「論座」発行元である朝日新聞社を容赦なく批判するのも魅力のひとつだが、読者の溜飲を下げる一方で、プライドの高い同社上層部をイラつかせていたことだろう(笑)。他方、『中吊り』コンビよりン世代上回る『ふたりの品格』のほうは、正直かなりゆるめの内容。だが、そのぶん(?)、大作家・井上ひさしの奥さんの機嫌を取るため、かの井上陽水を接待麻雀に駆り出したとか、"ブッチホン"で知られた小渕恵三元首相が、二千円札発行時に、絵柄を相談するため瀬戸内寂聴に直接電話をかけてきた、などの暴露話が満載。ちなみに、なんの因果か、両連載の掲載誌とも揃って今年休刊してしまった……合掌。

  
『中吊り倶楽部』
宮崎哲弥、川端幹人/洋泉社/1000円
評論家・宮崎哲弥氏と元「噂の眞相」副編集長・川端幹人氏が、互いに「ヘタレ左翼!」「権力の走狗!」と罵倒を繰り広げながらも、タブーに突っ込み、メディアを斬りまくる一冊。今はなき朝日新聞月刊誌「論座」にて連載されていた(現在は「週刊朝日」で連載中)。

  
『ふたりの品格』
矢崎泰久、永六輔/講談社/1470円
永六輔と元「話の特集」編集長・矢崎泰久氏が、政治から芸能、自らのヰタ・セクスアリス(!)までを縦横無尽に語りまくる一冊。今はなき講談社月刊誌「現代」にて連載されていた。連載時のタイトルは、「人生道中膝栗毛」。

(文/編集部)


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